有限会社富田牧場
有限会社富田牧場様は、北海道士幌町に位置する家族経営の牧場様です。
搾乳ロボットVMS™を入れたのは約8年前。導入時にこだわった点や導入による変化、実際の作業への影響や将来の酪農業への展望などをお聞きしました。
有限会社富田牧場様
- 牧場名:有限会社富田牧場 代表 富田博文 様
- 経営スタイル:パラレルパーラー10頭W、VMSスープラ 2台(OCC付モデル)
- 飼養頭数:280頭(※2023年9月現在)
Q.富田牧場様の歴史を教えてください。
父が結婚した頃、士幌町内の別の地域で酪農を開始しました。当時は、20~30頭をバケットミルカーで搾乳していました。今現在の地区に引っ越してきたのは、約45年前のことです。現地区は10軒のみが農協のリース牧場となっており、建物は農協所有、機械と牛は自己所有という、全国でも珍しい形態を取っているのが士幌町での酪農の特徴の1つでもあります。過去の組合長が、「広いところで規模拡大しませんか?」という企画を行った際に、父がそれを決めて移転してきました。移転してきてから一番初めは、スタンチョン60頭規模で年間当時250トン搾れば生活できるというスタイルの建物でした。その後、今から30年前にパーラーを導入し、それで120頭まで増頭しました。
Q.途中からパーラーに移行されたんですね。
その頃、パーラーは国内ではあまり普及していませんでした。士幌町では平成元年に初めて1軒目が導入されました。私自身は平成元年に高校を卒業した後アメリカに1年間、実習のために渡航したのですが、その頃からあちらでは規模拡大を目指しており1000頭規模の牧場も多かった。日本もそこまでの規模にはならなくても将来はそうなっていくのかな、という思いと当時のスタンチョンでは限界があり、パーラーなら規模拡大の可能性も持ち続けられるだろう、と思ったのが移行した大きな理由です。
Q.現在のVMS™を導入頂いたのは約8年前でしたが、なぜ搾乳ロボットを選択したのでしょうか?
VMSを入れたきっかけは、人手不足が一番大きかったです。また、これ以上の規模拡大は今現在、私自身は考えていません。自給飼料の面積と堆肥処理を鑑みると、今がちょうど良いキャパシティだと思っています。酪農って毎日が朝から夜までの仕事で、楽にしたいというのもあって。あとは、息子が20歳になり現在カナダで実習している(※2024年春にご帰国)のですが、私の代で終わってもいいけど、次世代が「こういう牧場だったら僕もやりたいな」、という状態にしておかないと後継者が育たないなと思って入れたというのもあります。
Q.VMS™導入を決める際には、家族内でどのような会話がありましたか?
既に導入している町内の人でも上手くいっている・いってない人がいましたが、父に意思を伝える際、結局ロボットを管理する人自身がどう使うかが大事だ、ということと、将来の後継者のことを伝えました。また、どうしてもフリートラフィック(自由往来型)でやりたかったので、十勝管内や管外の釧路方面も見に行かせてもらったんです。結果的には現在、平均以上の仕事が出来ていると思います。
Q.なぜフリートラフィック(自由往来型)へのこだわりがあったのですか?
牛に自由を与えることが良いと思っていました。経済性を優先して、牛が餌を食べたいのにゲートを通らないといけないとか、牛の行動を制限することをどうしても避けたかったのです。それは飼料設計や牛舎レイアウトの工夫次第で実現可能だと思っていました。誘導型の必要性は感じていませんでしたね。
牛は牛で搾乳ロボットにあった牛、人間も搾乳ロボットに合わせる生活が必要なので、それを検討しながら将来はやっていければいいのかなと思います。
Q.人手不足をどのように捉えていますか?
先にも言いましたが、酪農業界で働きたい人材、特に日本人は少なくなってきています。昔は、本州から北海道に憧れて来る人も多かったけど、最近は外国人労働者が多いですね。人の入れ替わりが激しく、現在働いてくれている2人も今年5月から来てもらっています。その前はベトナムから2名、ミャンマーや中国からも多かったです。その前は、日本人がほとんどでした。多分、日本人でも労働環境が良くなれば、働いてくれる人が出てくると思うので、いわゆる「3K」からの脱却を目指していければいいなと思います。
Q.牧場の労働環境はどのように変えていくべきだとお考えですか?
日本の現在の一般的な酪農業は、朝早くから夜遅くまで仕事がある、体力的にきつい、さらに新型コロナによるパンデミック後の酪農情勢では給料を十分に支払えないことが多い。そこで、ある程度規模拡大を図って補っていっていくというストーリーを考えると、労働環境の整備によって酪農業がもっと身近な1つの職業としての選択肢になるだろうし、動物が好きな人もいるので働いてくれるのかなと思います。
Q.VMSの導入は労働環境の整備の一部としても捉えられますか?
僕や妻は、朝晩と拘束時間のあったパーラー搾乳を経験しているので「楽になったな」と思いますが、初めから搾乳ロボットから酪農業を始める人は、やることが多くて意外と大変だな、と思うみたい。肉体的には楽になったけど、搾乳ロボットは夜中もアラームが鳴ったり、スマホからのアラームが鳴ったりするので、そういう意味では以前より大変になったかなと思います。
Q.VMSによって搾乳作業からは解放されましたが、牛群管理や他の作業の面から見てやらなければいけないことは増えたでしょうか?
搾乳作業自体がないことで肉体的にはかなり楽になっていますが、自分が年齢を重ねているので実感としては少な目ですね。しかし、搾乳作業は朝・晩にそれぞれ2時間の拘束時間が出てきますが、搾乳ロボットにすることで自分が好きな時間に他の作業ができる、それはとても大きい変化です。あと、今は自分がやっているけど、誰でも管理ができるようになっているとも言えますね。変なこと言えば、数字さえ見ることができれば素人でもできると言えます。
Q.さまざまなオプションもご紹介させて頂きました。
デラバルに搾乳ロボットを勧められたときに、一緒にハードナビゲーター(※オプション)も勧められたけど、多分本当に素人が始めるときに必要な機能かなと感じています。私の場合は、体細胞数の管理の方が経済的メリットを感じているのでOCC(オンラインセルカウンター=体細胞測定装置※オプション)を付けています。ただ、ハードナビゲーターを導入することでこれまで業界未経験の人でも運営ができると思いますよ。
Q.富田牧場様にとっての自動化とは。
私の牧場の場合は、ロボットに合わない牛はパーラーで搾乳しているので完全自動化とはまだ言えない状態ですが、これから規模拡大を考えれば必要じゃないかなと思っています。ただ、生き物が相手なので、機械だけでの対応は難しいと思っています。完全に人間が介在しなくなるということにはならないかな。
Q.色々なことがロボットで出来るようになってきています。今後の酪農業の変貌や将来の業界の姿をどのように見ていますか?
今は、多様な機械が世に出てきていますが、規模拡大を目指すなら私は搾乳ロボットを選択しますね。搾乳ロボットの台数を増やして管理する方が楽だと思っています。今は新型コロナ以降の消費の伸び悩みで牛乳余りが取り沙汰されていますけど、実際輸入している分があって余っている、国内消費が国産牛乳だけじゃ全然足りなくなる現状を見れば、まだ業界の先に光はあるのかなと現在感じています。酪農家軒数の減少も継続している。その中で規模拡大していく上では、搾乳ロボット台数を増やしていく必要が出てくると思う。
ー私達は「食べ物を生産している責任がある」と思っていますー
今後、あと10年もすると離農する人も今より増えていくと思いますが、続けていける限り将来も酪農業で食べていければいいな、と思っています。2024年春には、研修のためカナダに渡航していた長男が帰国し、頑張ってくれています。見分を深めてくれたと思うので、これからの運営にどう生かしてくれるのか楽しみです。(写真は、ご長男の佑亮さん)
※デラバルは、この結果が典型的なものであると主張するものではなく、この情報はサービスの保証を意味するものではありません。実際の性能や改善は、搾乳方法、牛の種類、牧場や牛群のメンテナンス方法など、さまざまな要因によって異なります。