有限会社西上加納農場様
北海道の酪農地帯・十勝管内士幌町に位置する有限会社西上加納農場様は、北海道内でもトップクラスの乳量を誇るギガファームでもあります。
この度、日本国内1号機となる「ロータリーE500」を導入いただきました。今回、導入までの経緯や導入後一か月が経過しての実際の使用感、また、ギガファームならではの運営や将来を見据えたときの業界展望についてなど、あらゆる観点からお話をうかがいました。
有限会社西上加納農場様
牧場名:有限会社西上加納農場 (北海道・士幌町)
飼養頭数:約1,820頭(内、搾乳牛約920頭)
搾乳システム:
ロータリーE500 50ポイント
10頭シングルパーラー
牧場の歴史
先代の社長がアメリカに行って、顧問の菊地先生と相談しつつロータリーが最適という結論に至りました。
2004年に酪農部門を立ち上げ、第3農場としてミルクファクトリーを新設しました。2005年からロータリーパーラーによる搾乳を開始。その後、2015年には北中施設を第4農場として増設しました。
旧ロータリーから最新ロータリーへの導入の背景とは?
ロータリーを長く使っていたので牛も従業員も慣れ親しんでいた、ということもありました。しかし、旧ロータリーは導入から約19年が経過していました。そんな中、特に危機意識を持ったのは2018年9月に発生した胆振東部地震。幸い、発電機を持っていたので搾乳自体は止めることなく続けることができましたが、自然災害の多い日本、そして北海道でもあのような大きな地震やブラックアウトのような危機がある可能性を考えたとき、今ある1基がもし使えなくなり、搾乳が出来なくなった時のリスクを考えると、2基目の必要性は前々から感じていました。
ロータリーE500期待していたこと
スムーズに牛が入る、ということは予め聞いていたので、不安よりも期待の方があったかなと思います。
牛の流れが詰まってしまうと、その分搾乳時間をロスしてしまうので、良い点かな。あと乳房炎防止として、エアウォッシュ機能(ライナー先端部を、水と空気で流す機器)にも期待していました。昔からいいなと思っていましたね。
稼働してからまだ1か月なので、あまり実感はないですが、治療する頭数自体は減っているかもしれないです。ただ、時期的なこともあるのでまだはっきりとは言えないです。
でも、あのクラスター(エバンザ)は軽くて楽でいいですね、という声を搾乳スタッフからも聞いています。あのミルカーになってから、体細胞数が20万越えと高めだったのですが15万前後くらいに減少しましたね。この頭数を搾るとなると、体細胞数は高い傾向にありました。
稼働後1か月が経過して
一か月程度経ってみて、ストール部分に設置している青いカウロケーター(※写真)が、自然と牛の脚を開いて搾乳クラスターをつけやすくさせてくれるので、作業がとても楽になったな、と感じました。ほら、脚癖の悪い牛って蹴ったり、クラスターを落としたりしますよね。滑って蹴る牛がいなくなっておとなしくなったな、と思いました。
これまでは搾乳中に20頭くらい脚癖の悪い牛がいましたが、ロータリーE500になってからは2頭くらいまで減った印象があります。スムーズかつ牛にとっても快適な搾乳を一貫して行うことができるようになったので、従業員の手間も減りました。操作性は上がりましたね。牛の入りやすさなど感じています。
今回、ロータリーE500の導入にあたって牛群管理システムを変えましたね。
いじってはいますが、なかなか難しいところはありますけどね。
デジタル化を身近に感じます。そういったシステムで管理できる人はできるのでしょうね。実際、もっといろんな機能があって、そういうのを使いこなしていく時代なのでしょう。その辺、最初は慣れるのに一定期間は掛かりますが、これまで以上に多様なシステムに期待はしています。特に、個体別管理の方法が増えることに期待を持っています。
また、今回発情検知に使うタグとしてアクティビティメーターを導入したのですが、発情検知率が上がった印象があります。ちゃんと個体の状態を捉えるようになったのでいいですね。今はリアルタイムで情報が入ってきて、事前にどんな状態かを把握できるので、予め次に何をすればいいのか段取りを組めます。
別棟には10頭シングルパーラーがあるので、搾乳しておかしい兆候のある牛がいたらすぐ分離できますし、牛群の中にいる個体を探して対処するのは大変。今はキャッチペンですぐに分離できます。
ロータリーの導入に伴う業務上の工夫の変化はありましたか?
大きく変えたことはないですね。一応、「生乳廃棄防止用の補助バルブ」を閉めることを徹底しましょう、ということはやることに決めました。これは従業員の方から過去の経験を活かした改善案として提案してやってくれました。
大規模牧場を運営していく上で
今は牛群全体を一旦綺麗にしたので良かったな、と感じています。生産調整の時に約200頭減らして約700頭にしました。一旦綺麗にしてから、牛群内容が変わりました。
実際に作業している人は、難しい牛は早く淘汰してくれと言うけど、経営者目線ではまだ一頭当たりペイできてない、というのはありますよね。でも作業をやってくれている従業員の気持ちも考えていかないと、皆さんに嫌々仕事してもらうという環境も良くないとわかっていますから。
今、働いてくれている従業員は30名程度いますが、人材確保は大変ですよね。どうすれば人材流出をなるべく食い止められるのか、というのも課題です。
牛の管理もさることながら、人材管理も牧場運営上では重要な要素です。そこが一番大きいかな。突然人材がいなくなってしまうと、その分の穴埋めをしなければならなくなって、負担が増えてしまいますからね。働く人に負担がかからないようにしていきたいなと。
未来の姿
今、近くに離農してしまったところがあるのですが、そこにも広げて第2牧場を展開していきたいな、と長期的には思っています。ただし、今の情勢では少し先の話かなと思っています。
目標に対してE500が果たす役割や期待していること
業界では多様なキーワードもありますが、牛一頭からどれくらい搾れるか、「乳から稼ぐ」、そこはぶれずにやっていきたいというのはあります。どんどん出していけるように追及していきたいですね。今現在、年間乳量12,600kgを出していますがそれ以上を目指していきたい。頭数が多いので、1頭当たりの乳量が多ければ頭数自体を増やす必要はないですが、それはそれで簡単じゃないことです。しかし、牛はちゃんとお世話してあげれば、きちんとお返ししてくれるものです。
デラバルとの関係性
ロータリー導入前に他社メーカーも検討してみましたが、やはり信頼感が一番あるデラバルさんにしました。すぐ来てくれるっていうのがデラバルさんかなと思って。色々迷ったのですが、とにかく信頼でき、メンテナンスの信用度が高くて対応がいいな、っていうところ、それが世界のデラバルさん、と判断しました。今後は、最新の技術を期待しています。
さらに進化して、ロータリーの中でも発情検知など牛の個体別により詳細な情報がわかるような技術が発達していくといいなと思いますね。是非、継続して紹介して欲しいと思います。
※デラバルは、この結果が典型的なものであると主張するものではなく、この情報はサービスの保証を意味するものではありません。実際の性能や改善は、搾乳方法、牛の種類、牧場や牛群のメンテナンス方法など、さまざまな要因によって異なります。