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株式会社ミルクファームすぎやま様

株式会社ミルクファームすぎやま様

株式会社ミルクファームすぎやま様は、京都府船井郡京丹波町に位置する牧場様です。
なんとVMSを3世代モデルにわたってご使用いただいている珍しい牧場様でもあります。

VMSの変遷と共に、2代目であった父・明さんの遺志を受け継ぎ、
3代目となり代表取締役として管理・運営を行う杉山裕亮様とお母様でいらっしゃる啓子様にお話を伺いました。

牧場基本情報

  • 所在地:京都府船井郡京丹波町
  • 牧場名:株式会社ミルクファームすぎやま様
  • 導入機器:VMS™V300 1台
  • 搾乳頭数:100頭(※2023年2月現在)

Q.牧場の歴史を教えてください。
啓子さん:最初は、旧牛舎で両親や主人の姉もいて、つなぎで40頭ほど搾っていました。亡くなった主人(明さん)は、小岩井農場や北海道の牧場で経験を積んで帰ってきてから以前の牛舎を立てて、規模を大きくしてきたんですね。
その頃は、開拓で入植される方がいてこの周辺にも10軒以上の酪農家がいました。1991年にパーラー牛舎ができて、哺乳ロボットも導入しながら徐々に広げてきました。
 
 Q.一番最初に搾乳ロボットを検討したきっかけは何だったんでしょうか?
啓子さん:主人が、北海道で搾乳ロボットを見学したことがきっかけでしたね。これが搾乳ロボットとの出会いだったと思います。それまで、両親や私たちも搾乳時の身体的な負担、例えば立ったり座ったりする作業による膝への負担が悩みの1つでした。周りの多くの酪農家の方も悩んでいる、とよく聞いていましたね。1世代目のVMSを入れた後で主人は、「搾乳ロボットいいな」と言っていましたよ。
  
Q.搾乳ロボットとの出会いでデラバルを選択して頂きました。
裕亮さん:近隣にすでにVMSを導入されている方がいたことと、アフターサービスを近畿圏内でも提供していることが決め手であった、と父から聞いていました。機器を長く使い続けていく、ということを考えるとアフターサービスへの不安が払拭できることは重要なことですよね。

Q.ミルクファームすぎやま様では、VMSを3世代にわたって入替をしていただいています。
裕亮さん・啓子さん
:2世代目に入れ替えをしたときは、1世代目のモデルが老朽化していたことが理由です。
1世代目を初めて導入してから約10年ほどが経過し、次モデルは確実に性能が上がっているだろうと思っていたし、搾乳ロボット自体の安定稼働という面からも、1つでも新しい機種がほしいと検討していたと聞いています。
2世代目を実際に入れてみて、明らかに装着ミスや搾乳作業の正確性、安定性が向上していたこと、適応可能な乳房の形の範囲も大きく広がっており、
満足していたようです。  
さらに、3世代目となる現在の最新機種VMS™V300も、前回入替を検討したときと同じ導入後10年経過のタイミングに差し掛かってきた時期でした。
2世代目は大きなトラブルはなかったのですが、世界情勢は物流の混乱や、年々さまざまな資材が高騰していたのを目の当たりにして、最新の機能を搭載しているであろう新機種への入替はなるべく早い方がいい、という判断を下しました。
  
Q.3世代目のVMS™V300は、どのような印象をお持ちですか?
裕亮さん:既に導入していた他の牧場で実機を見たときに、それまで「ロボットっぽい」動きをしていたアームが人間のように滑らかな動きで装着していくのが目に見えてわかりました。
もちろん最新機種なので、性能や向上している部分があるのだろうと予測はしていましたが、それ以上に装着ミスも少ないです。
VMS™V300なら、よほど手搾りにこだわりのある方でなく、搾乳作業を任せたい方にとってはとても満足できるパフォーマンスになっていると思います。
また、これまでVMSに初めて入れる牛に必要だった登録作業(ティーチング※乳頭配置の座標入力)が不要になったのは本当に楽でした。

私たちの牧場ではチーズの生産もしているのですが、使用する生乳はすべてVMS™V300で搾乳したものを使用しています。飼養方法の違いももちろんあると思いますが、体細胞数も10万代と低い結果になっています。牛のストレスが少ない、ということも言えますね。

Q.VMS™V300ではよりデータによる飼養管理も発展してきたと思います。
裕亮さん:現在は、ミルクサンプラーによって毎日乳検をしてるようなものです。乳成分自体に問題がなかったとしても、乳量だったり万歩計だったり乳量変化だけでも、プラスマイナス5~10%前後の増減があることは一目でわかります。
そんなデータの中で、急に60%程度の増減が発生した牛は、だいたいデータを見るだけで、何かおかしいな、と判断できる。また、例えば一本不完全搾乳が出たら、乳房炎の可能性があるのではないかという疑念を、牧場内にいなくてもオンラインでデータから確認できます。

もっと言うと私が京都から北海道に出掛けていても、作業担当者に「あの牛見ておいて」と指示が出せます。個体乳量がわかれば採算ラインとか授精してるかしてないか、妊娠しているか、この辺の乳量まできたら出荷しようかとか、乳検が入ってなくても一発ですぐに出てくるし、多様な管理が可能で指示もしやすくなりますね。

VMS™V300は色々なオプションもあるし、将来の牧場の可能性をどのように捉えるかで最低限の機能に抑えたり、ある程度自分の考えている計画に合わせて柔軟に機能を選択していくことができます。
妊娠鑑定も、獣医師がすぐに来れない場合や、獣医師自体の数が減少していく中で、牛が200、300頭と増頭していくことになったとき、スタンチョン設備がない私の牧場では従業員自身が対象牛を捕まえるのは大変です。VMSが持つ機能では乳汁で調べられるし、流産までもすぐに調べられます。

Q.搾乳ロボットを導入することは、牧場にとってどんな意味を持ちますか?
裕亮さん:使う側も24時間アラームが鳴る可能性を理解する必要があります。原因追及を行う場合は、デラバルのサービスマンに連絡しないといけないし、対応する人も覚悟が必要になってきてしまいますね。ただ、現場でミルクラインが詰まっている、という程度であれば自分自身で対処できます。

私たちがVMSの1世代目を入れていた十数年前は、搾乳ロボットの不調時には付属の遠隔カメラを操作して対応してもらっていましたが、今は直接、自分でもデラバル側からも見て対処できます。VMS™V300が収集したログなどから原因を推測できるし、私たちがどこのどういう部品が異常だとか、を出せるからわかりやすいし、VMS™V300本体も管理しやすいですね。
本体のパーツを外すような少し大掛かりな作業でも、自分自身でやろうと思ったらサービスマンとも意思疎通をしやすいので、対処方法も増えてやりやすいですね。
昔なら、電話口でどこのどういうようなパーツで、とよほど機械に詳しい人ならいいですけど、それは大変な作業だったと思いますよ。

 Q.どのような課題や希望を持った方にVMSは合うと思いますか?
裕亮さん:合う・合わないは、自動化に何を求めているかにもよりますが、「楽がしたい」「作業を省力化したい」という方には合っているかと思います。
どうしても頭数を入れだすと、牛の入りたいタイミングが似通ってくるため、12時間という区切りをつけると13~14時間を超えてくる牛が出てきます。そういう牛を出したくないとか、決まった時間内・間隔内に絞りたいという場合は合わないのではないでしょうか。

また、搾乳ロボットのパフォーマンスの平均として出されている数字、搾乳量や回数などを鵜呑みにして、「搾乳ロボットだから搾乳をしてくれるんだろう」「ベッド掃除くらいはするけど」という意識から始まると苦労する点は多くなるのではないかと感じます。
自分自身で目標に近づけるアクションを起こす必要がありますし、搾乳ロボットを導入したらこうなる、という1つの答えを期待するのは違うと思います。

Q.実際に3世代目に入替いただきましたが、4世代目も考えられますか? 
裕亮さん:そのような未来の可能性も想定して、牛舎を構成しています。VMS™V300は期待していたより満足度が高く、これなら搾乳作業の部分を任せて、すごく小さいスペースに届いていてもメインは100頭をVMSで搾乳して数頭は別に絞れるシステムにするとか、同規模ならそういった対応でもストレスなくいけるかなと思います。

本音を言えば、搾乳ロボット自体は複数台で入れる方が、メンテナンスやトラブル発生時にはどちらかで搾れるし、完全にストップすることなく搾れるから、できたらそうしたらいいでしょうけど、資金もスペースも必要ですしね。私たちのケースで考えた場合は、この設計でできてるので、これに対してもう一つ牛舎として継ぎ足せる状態にするという選択肢もあります。

今は、牛舎が左右に分かれているので、どちらかを搾乳ロボットにして、もう一方で搾乳ロボットに対応しない牛を搾乳できるようにするなど、搾乳ロボットに任せる比率を高めるポテンシャルがあるし、その浮いた時間的な余裕で違う作業や管理をするというほうが、全体的にはやりよくなるかと思いますね。

Q.VMS導入により牧場の省力化が進んだと思いますが、その次に優先していくことはありますか?
裕亮さん:今現在行っていることは省力化ですが、ただ単純に人員削減なり、作業を少なくするだけでは搾乳ロボットによる経営を行う意味がなくなるので、例えば同じ人員体制で110頭を150頭に増頭するとか、ヘルパーを含めて運営しているのを、なくしていくとか、+αがないと入れる意味がないかなと思います。
トータルで考えて、今までは人が「100」やってたのをだんだん機械化して削減できた労力で、違うことに取り組む方向性をとっていきたいですね。
 
 Q.牧場を経営を担っていく次世代として今後、目標や将来や目指していきたいことはありますか?
裕亮さん:一気に数百頭単位で増頭するメガ・ギガファームは目指していませんが、しぼんでいく酪農業界の中で軒数も減ってきていますよね。
京都や近畿の中で、父の「牛を大事にした経営を」という大切な部分を残しながら、そして、乳量を伸ばしながら牛が少しでも増えて活かしていけるような、管理や経営を目指していきたいですね。
どこかにあまり過大な負担をかけないようなやり方をしていきたいな、と思っています。