冬の寒さから乳頭を守るには?

トレンドトピックス

牛は寒さに強いと言われていますが、本格的な冬が来る前に「乳頭」管理をもう一度確認してみましょう。

 

冬の寒さによる乳頭衛生への影響

冬は乾燥した空気や風で水分が蒸発し、細胞が乾燥します。細胞内の水分が不足すると、保湿機能が低下し、皮膚が乾燥します。これを補おうと、皮膚細胞は過剰に新しい細胞を作りますが、過剰生産が続くとターンオーバーが遅れ、古い細胞が剥がれ落ちにくくなります。結果、古く乾燥した細胞が蓄積し、乾燥した乳頭が形成されます。

さらに、特定の条件下では乳頭が完全に凍結することもあります。ミネソタ大学の研究では、外気温よりもウィンドチル(※1)の方が重要であることが示されています。風冷度合が-18℃(0°F)以上であれば、乳頭が凍結することはまずありません。しかしながら、-18℃(0℉)~-32℃(-25°F)の間は、乳頭が凍結する可能性があります。
もしウィンドチルが‐32°C (-25°F)以下で乳頭が濡れている場合、1分以内に凍結する可能性があります。


乳頭が凍結する可能性がなくても、乾燥でひび割れた皮膚は、様々な感染症リスクが高まる恐れがあります。特に未経産牛や生後間もない子牛は注意が必要です。冬の乳頭変化の主な要因は室温と風冷度合であるため、暑熱対策と同様に冬場も気を付けなくてはなりません。

(※1)ウィンドチル(風例指数)とは?
皮膚が空気に触れることによって失われる体表の熱を算定して得る値です。例えば気温が-25度以下のとき、風がなければ体感温度は気温と同じ-25度ですが、同じ気温で風速約11m/sの風が吹いている場合の体感は-41度まで下がります。(出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典)

 

乳頭の凍結を防ぐ5つのポイント

1.牛体や乳頭が寒さにさらされる機会がないか確認しましょう。

フリーストールの場合はカーテンを下げて風速を下げ、風冷を遮断します。
牛舎内の換気も管理しましょう。カーテンが破れていないかチェックし、すきま風を避けるようにします。つなぎ牛舎の場合はドアが開けっ放しになっていないかチェックしましょう。
牛を放牧する場合は、ウィンドブレーカーを用意してください。

2.ストールは清潔で乾燥した状態に保たれていますか?

快適で乾燥した場所やストールの確保は、乳頭の健康にとって非常に重要です。牛床が濡れていると、牛体表面の熱が奪われるだけでなく、乳頭が濡れ、凍傷になる可能性があります。

3.搾乳システムは適切な機能を維持していますか?

パーラー搾乳の場合、搾乳機器が乳頭にストレスを与えます。
寒さによって乳頭が既にストレスを受けている可能性がある冬期間には、適切に機能しているか確認することが不可欠です。真空圧レベルが高い、またはパルセーションが速いと、血流が悪くなり乳頭マッサージが不十分になります。過搾乳は避け、搾乳後は機器を洗浄・消毒しましょう。

4.搾乳後、ディッピング剤で乳頭消毒していますか?

一部の酪農家の皆様の中には、気温が氷点下まで下がるとポストディッピングをやめる方もいます。しかし、乳頭消毒をやめると、伝染性乳房炎病原体の蔓延が実際に増加することが研究で示されています。

したがって、冬期間もディッピングを継続し、乳房炎を予防することが重要です。また、冬から春にかけての乳頭皮膚の状態を良好に保ち、体細胞数の変動を抑える可能性もあります。

-7°C以上の氷点下では、搾乳前後の保湿成分入りのディッピング剤を使用する必要があります。ディッピング剤に含まれる保湿剤は、皮膚がひび割れを起こす可能性を低減し、細菌が乳頭管に侵入する可能性を最小限に抑えるのに効果的です。
気温が -7℃を下回る場合は、エモリエント効果(皮膚のうるおいを保持し、柔軟にする効果)の高い冬期用ディッピング剤の使用を検討してみましょう。


5.衛生管理を徹底しましょう

手袋とタオルを常に使用し、搾乳前に乳頭を完全に乾燥させ、水の使用は最低限にしてください。
殺菌効果が証明されている消毒剤で浸した後、炎症を起こしている皮膚はこするのではなく、そっと優しく拭き取ります。こうすることで、乳頭の損傷やひび割れを最小限に抑えることができます。

6.ポストディッピング後、乳頭が乾くまで充分な時間を取りましょう

ポストディッピング後、乳頭が乾くまでの時間を確保するためという理由で、牛を極寒の風にさらすことは避けてください。やむを得ない場合は、余分な消毒液を拭き取ってください。乳頭皮膚はひび割れや凍結の影響を受けやすいため、きちんとチェックすることが重要です。
バリアディッピング剤は通常、乾燥に時間がかかるため、極端な低温下での使用はおすすめしません。

7.ディッピング剤はメーカーの推奨に従って保管しましょう

冬期管理で忘れがちなのが、ディッピング剤の適切な保管方法です。製品によっては、非断熱・非加熱の建物に保管すると凍結することがあります。凍結した場合、有効成分の化学的性質に影響を及ぼす可能性があります。ご使用の場合は具体的な情報をメーカーに確認しましょう。

寒い冬の間、乳頭を守るためには、時間と計画立案・実行の労力、出費もあるかもしれませんが、その分の費用対効果は見込まれるでしょう。

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